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「エイズ予防法案」の廃棄を強く求めます

民主主義とは、少数者の意見や権利が多数者によって犯されることがないように、考え出された政治形態であったはずですが、 昨年3月31日に後天性免疫不全症候群の予防に関する法律案が国会に上程されて以来の状況を見ていると、日本の民主主義はどこへ行ってしまったのだろうと戸惑わざるを得ません。
血友病者や現場医師たちをはじめ、各種団体、学者、法律家等がこの法案の人権侵害性を指摘し、廃案を求めているにもかかわらず、血友病者を予防法の対象から除外して成立を謀ろうとしています。
日本の国会運営には国民の声は反映されないのでしょうか。

今国会の動きが浮き彫りにしたのはエイズ予防法の狙いが、患者・感染者に対する治療・支援どころか、感染予防にさえなく、 むしろデマと厚生省の策略によって「ハイリスク・グループ」と名指しされてきた同性愛者や風俗営業に携わる女性等のあぶりだし、管理・統制にあったのだということです。

これまで厚生省は、日本初の患者を事実と違う同性愛者であると発表したり、各地の保健所等で配布しているパンフレットに同性愛者が多数を占めるアメリカの感染状況をクローズアップして載せるなどして、 同性愛者に対する偏見を煽ってきました。また、昨年の神戸の女性患者について「売春婦」であったかのような情報を流して、風俗営業女性に対する偏見を助長してきました。
今年5月8日に発表された「同性愛者や特殊個室浴場などで働く女性、麻薬常用者等に対する疫学調査」はこうした偏見を一層強めるものです。

このような偏見強化の地ならしをしたうえで、法案に規定される「感染者であると疑うに足りる正当な理由」や「病原体を感染させるおそれ」といった拡大解釈可能な「理由」や「おそれ」を振りかざして、 行政が患者と医者の間の信頼関係に介入してくれば、エイズ医療がどのようなものになるかは明らかなことです。
さらに、上述の「理由」や「おそれ」を医師や知事が認知するためには、 地域住民の相互監視や密告が必要となるはずで、管理社会をますます強化するような、こうした施策は絶対に避けねばなりません。

また、昨年の神戸、高知の女性、今年の大阪の男性に関する情報漏洩の実態は医療機関、行政ともに患者・感染者の人権、プライバシーを保護する意志もその能力もまったくないことをさらけだしました。

同性愛者や風俗営業女性は、日々偏見と差別にさらされています。これまでに私たち同性愛者がエイズ予防法案に対する反対の声を挙げにくかったのも、日常的な差別、偏見のゆえです。 病に対する人びとの恐怖感に乗じて、声なき少数者を標的とした法案の成立を強行するのは、民主主義の大原則に反するものです。我々は国家による弱者いじめを断じて許すことはできません。

エイズ予防法案の速やかなる廃案を強く求めます。

1988年9月18日
大阪ゲイ・コミュニティ

社会労働委員会委員各位

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